
[ロンドン発(ロイター)]ロシア政府がウクライナ産穀物の輸出に関する国際合意(黒海穀物イニシアティブ)の揺さぶりを狙った発言を続けている。
この合意は昨年7月、ロシア・ウクライナ戦争によって悪化している世界的な食糧危機へ対処するために、国連が仲介してロシア、トルコ、ウクライナが合意したものだ。穀物や油糧種子の主要産地であるウクライナの3つの港から輸出を再開できるよう、「穀物回廊」と呼ばれる安全な輸送ルートが設けられた。現在の合意は5月18日に期限切れを迎える。
ここでは、その注目のポイントを紹介する。
■何が輸出されたのか?
安全な航路が確保されたことで、ウクライナはトウモロコシ1390万トン、小麦750万トンを含む約2770万トンの農産物を輸出できるようになった。これは、現在の2022~23年シーズンにおけるウクライナのトウモロコシ輸出の約60%、小麦輸出の約56%に相当する。その他、菜種、ヒマワリ油、ヒマワリミール、大麦などが出荷されている。
主な輸出先は、中国(630万トン)、スペイン(480万トン)、トルコ(300万トン)となっている。[輸出国、輸出量の内訳はこちら:https://www.un.org/en/black-sea-grain-initiative/vessel-movements]
■なぜロシアは合意からの離脱を口にするのか?
ロシアは、ロシア農業銀行(Rosselkhozbank)をSWIFT決済システムへ再接続させるなど、欧米がロシアの穀物・肥料の輸出に対する障壁を取り除かない限り、合意の有効期間の延長はないとしている。
その他、農業機械・部品の供給再開、保険・再保険の制限解除、トリアッティ―オデサ間のアンモニアパイプラインの再開、食品・肥料の輸出に関わるロシア企業の資産・口座の凍結解除などを要求している。
欧米がこの要求に応じる見込みはほとんどない。……

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。