「クリティカルミネラル」を巡り強化される国家的イニシアティブ

執筆者:小山 堅 2023年5月10日
タグ: 経済安全保障
今年4月、チリはリチウム産業の国有化を発表した。写真はチリ・アタカマ砂漠のカラマにあるチリ企業SQMのリチウム鉱山(c)AFP=時事
ロシアによるウクライナ侵攻によって、潜在的な競争相手や敵対国に戦略物資の供給を依存するリスクが明確に認識された。今後も脱炭素化を推進するためには、蓄電池に使う鉱物や、モーターに必要な永久磁石に使うレアアースといった「クリティカルミネラル」の確保が重要な課題となる。各国はこれらの戦略物資の重要性に鑑み、国家による戦略的なイニシアティブを強化し始めている。

 

 日本を含む世界の主要国は、エネルギー安全保障の強化と脱炭素化の両立を目指すエネルギー転換に本格的に乗り出している。ウクライナ危機発生まで、世界のエネルギー転換に関わる議論は脱炭素化一色に染められていた感すらあったが、状況は様変わりした。経済や暮らしを守るうえで必要不可欠なエネルギーの安定供給をどう確保するかが、ウクライナ危機によるエネルギー価格高騰及び市場不安定化の下、最重要の喫緊課題として浮上したのである。

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執筆者プロフィール
小山 堅(こやまけん) 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。政府のエネルギー関連審議会委員などを歴任。2013年から東京大公共政策大学院客員教授。2017年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。主な著書に『中東とISの地政学 イスラーム、アメリカ、ロシアから読む21世紀』(共著、朝日新聞出版)、『国際エネルギー情勢と日本』(共著、エネルギーフォーラム新書)など。
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