[ワシントン発/ロイター]ロナガスクジラが長年守り続けた「地球史上最も巨大な生物」の座を、新しく発見された動物が奪おうとしている。
学術誌『ネイチャー』で8月2日、ペルーで発掘された太古のクジラの化石に関する論文が発表された。約3800~4000万年前の始新世時代に生きたペルセトゥス・コロッサスと呼ばれる動物で、マナティのような体型をしており、長年最も重い動物とされてきたシロナガスクジラの体重を上回る可能性があるという。
ペルセトゥスは体長約20メートル、体重は最大340トンにのぼると推定される。これは、シロナガスクジラや最大級の恐竜を超える重量だ。学名は「巨大なペルーのクジラ」を意味する。
イタリアのピサ大学の古生物学者で、論文の筆頭著者Giovanni Bianucci氏は、「この動物は、間違いなく極端な体重が特徴です。進化の過程が、私たちには想像がつかないような特徴を生むことを物語っています」と語った。
ペルセトゥスの体重は最小で85トン程度、平均約180トンと推定される。記録に残るシロナガスクジラの最大個体は体重約190トンだが、体長はペルセトゥスを上回る33.5メートルだった。また、今年5月には約9500万年前にアルゼンチンで生きたアルゼンチノサウルスが最も体重が重い恐竜だと発表されたばかりだった。アルゼンチノサウルスは首が長く四足歩行をした草食恐竜だが、体重は約76トンだったと推定される。
研究では、ペルセトゥスの骨格の一部がペルー南部海岸の砂漠から発掘された。クジラの化石が豊富な地域として知られ、13個の脊椎骨、4本の肋骨、1つの腰骨が確認された。見つかった骨は異様に重く、密度が高くなる現象の「肥大緻密化」を示していた。クジラ、イルカ、ネズミイルカを含む現存のクジラ目動物で肥大緻密化は見られないが、マナティーやジュゴンを含む海牛類ではこれが見られる。
ペルセトゥスは骨格の重さだけでも、シロナガスクジラの2倍以上の5~8トンあると推定される。
Bianucci氏は「ペルセトゥスの脂肪が多く、膨れ上がった体型は、現存のどのクジラよりも海牛類に近かったと考えられます。海牛類の中でも、体の巨大さや生活スタイルが恐らく似ていたことから、1741年に発見され、たちまちのうちに人間によって絶滅させられたステラーカイギュウを思い起こさせます」と述べた。
頭蓋骨や歯の化石は見つかっていないため、……
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