習近平政権は金融リスク拡大にどう対処しようとしているか──6年ぶり金融工作会議でみえてきたもの、みえないもの

執筆者:福本智之 2023年11月27日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
資産比率で3割近いデベロッパーが実質債務超過に陥っている[2023年10月9日、江蘇省南京市](C)AFP=時事
習近平政権3期目の経済運営がようやく動き始めている。金融リスクの防止、解消が焦点となった10月末の中央金融工作会議のコミュニケ等を踏まえると、地方債務問題の解決には現実的な道筋がみえてきたと言えそうだ。一方で、長引く不動産不況への抜本対応は先送りされた観が強い。

 10月30~31日、中国で中央金融工作会議が開催された。金融工作会議は、約5年に一度のペースで開催され、その時点における金融を巡る重要事項についての対処方針を決める重要会議である。今回は2017年以来、6年ぶりの開催となる。

 このタイミングで、金融工作会議を開催する最大の趣旨は、金融リスクの防止と解消のための対応方針を決めることにあった。中国では不動産不況が長引いており、大手不動産デベロッパーの経営危機が相次いで表面化している。また、不動産不況や景気低迷のあおりを受けて地方財政が悪化し、地方債務問題が深刻化している。いずれも、金融システムを揺るがしかねない問題だけに、この時期に議論する意味合いは大きい。本稿では、中央金融工作会議のコミュニケや最近の政府の政策動向を踏まえ、中国が金融リスクの防止と解消にいかに取り組もうとしているのかみていきたい。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
福本智之(ふくもとともゆき) 大阪経済大学経済学部教授 1989年日本銀行入行。2000年在中国大使館一等書記官、2010年日本銀行国際局総務課長、2011年国際局参事役(IMF世界銀行東京総会準備を担当)、2012年北京事務所長、2015年北九州支店長、2017年国際局審議役(アジア担当総括)、2020年国際局長を歴任後、2021年4月より現職。株式会社経営共創基盤シニアフェロー、東京財団政策研究所研究員を兼任。1989年京都大学法学部卒、1995年香港中文大学、1996年対外経済貿易大学留学、2008~2009年ハーバード大学ケネディ行政学院フェロー。著書に『中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス』 (日本経済新聞出版)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top