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【前回まで】防人税を納めるか兵役に就くか、国民に選んでもらう――。それが土岐の狙いだが、命懸けで提案できる政治家はいるのか。土岐が思い描くのは「都倉総理」だった。
Episode6 一世一代
15(承前)
土岐の強い思いを知って、南郷は腕組みをして考え込んでしまった。
「君ほどの男が、そこまで入れ込んでいるとは、都倉君はかなりの人たらしだな」
土岐がここまで都倉に入れ込み、勝手に同志だと思っているのには理由がある。都倉が、ようやく保守党議員として頭角を現し、財務政務官に就いたのは、土岐が入省十年目で課長補佐に昇格したばかりの頃だ。大臣官房に在籍していた土岐は、官房長から、「政務官が、若手官僚と国家財政について学びたいとおっしゃっているので、事務局をするように」と命じられた。
都倉の最大の関心事は、歳入と歳出のバランスを考える財政規律、不要な歳出を削減する方法、そして、増税提案が実現しない理由だった。いずれも一筋縄では改善が難しい問題ばかりだ。
直前まで、消費増税の担当部署にいた土岐は、財政の基礎から、レクチャーを行うと同時に、同期入省者を中心にチームを組んで、幅広い知識や経験をもとに、都倉の疑問に応えた。
その結果、彼女が導き出したのは「結局は、政治家のだらしなさが、この国の前進を止めている」という結論だった。

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