オペレーションF[フォース] (68)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第68回

執筆者:真山仁 2024年6月8日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)EPA=時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】防人税を納めるか兵役に就くか、国民に選んでもらう――。それが土岐の狙いだが、命懸けで提案できる政治家はいるのか。土岐が思い描くのは「都倉総理」だった。

Episode6 一世一代

 

15(承前)

 土岐の強い思いを知って、南郷は腕組みをして考え込んでしまった。

「君ほどの男が、そこまで入れ込んでいるとは、都倉君はかなりの人たらしだな」

 土岐がここまで都倉に入れ込み、勝手に同志だと思っているのには理由がある。都倉が、ようやく保守党議員として頭角を現し、財務政務官に就いたのは、土岐が入省十年目で課長補佐に昇格したばかりの頃だ。大臣官房に在籍していた土岐は、官房長から、「政務官が、若手官僚と国家財政について学びたいとおっしゃっているので、事務局をするように」と命じられた。

 都倉の最大の関心事は、歳入と歳出のバランスを考える財政規律、不要な歳出を削減する方法、そして、増税提案が実現しない理由だった。いずれも一筋縄では改善が難しい問題ばかりだ。

 直前まで、消費増税の担当部署にいた土岐は、財政の基礎から、レクチャーを行うと同時に、同期入省者を中心にチームを組んで、幅広い知識や経験をもとに、都倉の疑問に応えた。

 その結果、彼女が導き出したのは「結局は、政治家のだらしなさが、この国の前進を止めている」という結論だった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 1962(昭和37)年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。他の作品に『プライド』『黙示』『オペレーションZ』『それでも、陽は昇る』『プリンス』『タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか』『レインメーカー』『墜落』『タングル 』など多数。
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