日本企業のAI導入が進まない本当の理由

執筆者:上田雄登 2024年8月26日
エリア: アジア
既存のIT部門が、生成AI導入の足かせとなっている (C)Maki_Japan/stock.adobe.com
生成AIのビジネス活用は、実は思いのほか進んでいない。なぜか。その大きな理由の一つとして、既存のIT部門がAI導入の障害になっていることが見逃せない。現場主導のアジャイルな取り組みが必要だが、それには何が出発点になるのだろうか。

 近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の登場により、ビジネスの世界に大きな変革の波が押し寄せている。多くの企業が生成AIの潜在的な可能性に注目し、導入を検討しているにもかかわらず、実際の活用は思うように進んでいないのが現状だ。

 日本の企業における生成AI導入の遅れは、一見すると法規制の厳しさが原因のように思われるかもしれない。しかし、実際には日本の法規制は他国と比較しても厳しくなく、むしろ技術革新に追いついていない状況だ。では、なぜ企業は生成AIを有効活用できていないのか。その真の理由は、意外にも企業の内部に潜んでいる。

最大の障壁は現場とIT部門の分離

 生成AIの導入が進まない最大の要因は、企業の組織体制にある。多くの企業では、現場とIT部門が分離しており、この構造が生成AI活用の大きな障壁となっている。

 そもそも生成AIは従来のITとは大きく異なる。従来のITスキルは専門的なものだったため、IT部門が中央集権的にDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めていかなければいけないという事情があったが、生成AIは非エンジニアでも簡単に扱えるため、現場から改革を進めることが可能である。

 しかし既存の技術の枠組みの中にあるIT部門主導で生成AIの導入を進めてしまうケースがある。また現場の意見を汲んでいない企業独自のガイドラインやルールにより、生成AIを導入しようとしてもIT部門が関所となってしまい、現場がやりたいことができないといった場合もある。実際に企業に提案をする際、現場とは別の場所にあるIT部門が障壁になっていることも多く見られる。

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執筆者プロフィール
上田雄登(うえだゆうと) 株式会社GenerativeX 取締役CSO。大阪府生まれ。東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。株式会社YCP Japan、松尾研究所を経て、2023年6月に生成AIを用いたDXソリューションを提供する株式会社GenerativeXを共同創業し取締役CSOに就任。著書に『60分でわかる! 生成AI ビジネス活用最前線』(技術評論社)、『ビジネスに魔法をかける 生成AI導入大全』(KADOKAWA)がある。
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