Weekly北朝鮮『労働新聞』 (91)

ロシアとの戦略パートナーシップ条約を批准、自爆ドローンの大量生産を指示(2024年11月10日~11月16日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年11月18日
エリア: アジア
朝鮮中央通信が配信した写真では、無人機の機体にモザイクがかけられていた[自爆攻撃型無人機の性能実験を現地指導する金正恩国務委員長=2024年11月14日、場所不明](C)AFP=時事
6月に締結されたロシアとの「包括的な戦略パートナーシップに関する条約」を、11月11日に「国家首班」である金正恩国務委員長が批准した。また、同委員長は自爆攻撃型無人機の性能実験を現地指導し、「一日も早くロット生産システムを構築して本格的な大量生産に入る」ことを指示した。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 11月12日付の1面トップは、6月19日に締結された朝露間の「包括的な戦略的パートナーシップ(「同伴者関係」)に関する条約」が国務委員長政令によって批准されたことを短く報じた。「朝鮮民主主義人民共和国の国家首班」が11月11日に政令に署名したという。条約は批准書が交換された日から効力を持つとも付記された。10月に改正された北朝鮮憲法の全文は明らかになっていないが、昨年9月改正の憲法では国務委員長の権限として「外国と締結した重要な条約を批准、又は廃棄する」とある(第104条6項)。

『労働新聞』に「朝鮮民主主義人民共和国の国家首班」という言い回しが出てきたのは、金正恩時代に入って3回目となった。2014年4月10日付では金日成(キム・イルソン)が1948年に「国家首班」である内閣首相に就任したことが描写されたが、2024年9月25日付では、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長談話の中で「国家首班の直属独立情報機関である航空宇宙偵察所は…」との言及があり、初めて金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対して「国家首班」が用いられた。北朝鮮憲法において国務委員長は、「朝鮮民主主義人民共和国の最高領導者」(第100条)と規定されてきたが、そこに修正が加えられたのか、慣用的な仕様なのかはまだ分からない。ただ、「最高領導者」という用語は7月24日付を最後に一切使われなくなっている。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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