[シドニー発/ロイター]オーストラリア政府が全国で16歳未満のSNS利用を禁止する。世界初の規制をどう実行に移すかを模索するソフトウェアテスターたちは防衛や選挙関連の業務経験を持つが、今回の研究では別の経験を活用する予定だ。自分の子どもたちとネット利用で言い争った経験である。
技術請負会社KJRのゼネラルマネージャーであるアンドリュー・ハモンド氏は、「私たちはそれぞれ、さまざまな年齢の子どもを持つ親であり、子どもたちが持つあらゆる小技をよく知っている。子どもたちは非常に工夫を凝らすので、私たちも目と耳をしっかり開いて対応する」と述べた。同社は、来年1月から3月にかけて、ランダムに選ばれた約1200人のオーストラリア人を対象に試験を実施する。同社はこれまで、アフガニスタンに派遣されたオーストラリア軍向けソフトウェアの検証なども手掛けてきた。
2025年後半から、MetaのInstagram、イーロン・マスク氏が所有するX、TikTok、Snapchatを含むプラットフォームは、16歳未満のユーザーを排除するための合理的な措置を講じていることをオーストラリア政府に示さなければならない。これに違反した場合、最大4950万豪ドル(3200万米ドル)の罰金が科される。なお、教育現場で一般的に使われているGoogleのYouTubeは対象外である。
しかし、この規制の「合理的な措置」が具体的に何を示すのかは明確ではない。英コンサルティング会社のAge Check Certification Schemeによる審査が、その責任を担うことになる。審査の対象となるテック企業は12社程度と想定され、2025年半ばまでに勧告が出される。
法案の最終段階での修正により、現在は身分証明書の提出を求めているプラットフォームは、代替の年齢確認手段を提供しなければならないと定められた。検討されているオプションとしては、ユーザーの動画セルフィーを生体認証で分析後に削除する「年齢推定」、ユーザーが身分証明書を第三者機関にアップロードし、その機関がプラットフォームに匿名の「トークン」を送信する「年齢確認」、ユーザーのメールアドレスを他のアカウントと照合する「年齢推測」といった手法があるようだ。
一部のヨーロッパ諸国や米国の州では、ソーシャルメディアの年齢制限を法律で定めているが、プライバシーや表現の自由を保護するための法的課題により、実施体制を整えた国はまだない。この試験は、年齢確認技術に関するこれまでで最大規模の実験の1つであり、若者の精神衛生やデータ収集に対する懸念が高まる中、ソーシャルメディアの年齢制限を推進する世界各国の政治家やテック企業に道筋を示す可能性がある。Instagramの10代向けプライバシー設定を強化する新システムで年齢確認を行う企業Yotiの最高政策規制責任者ジュリー・ドーソン氏は、「オーストラリア政府のアプローチは、他国がソーシャルメディアコンテンツのオンラインでの年齢確認にどのように取り組むかに影響を与える可能性がある」と述べた。
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