売上11兆8400億円を過大に計上。史上最悪の粉飾決算が発覚した。
中国不動産大手・恒大集団(エバーグランデ)は2019年に2139億元(約4兆4900億円)、2020年に3501億元(約7兆3500億円)の売り上げを水増ししていた。中国証券監督管理委員会(証監会)によってこの3月に明らかとなった。粉飾額はもともと発表されていた2019年売上の45%、2020年売上の69%に相当する。
どうやったらこれほどの金額を水増しできるのか。粉飾の内実も気になるところだが、筆者が衝撃を受けたのは金額だけではない。恒大集団の経営危機が少なくとも2019年には始まっていたという“時期”の問題も驚きだった。広く報じられているとおり(そして私自身も何度も書いてきた話でもある)、同社の危機は2020年夏に施行された不動産企業への融資規制から始まったとされてきた。規制後に必死に対応しようとしたがその努力も空しく、2021年に債務危機に陥り、2022年に不動産業界全体の危機に広がった……という筋書きだ。
実際に中国全体の住宅販売統計を見ても、2021年まで右肩上がりで成長が続き、2022年からすとんと落ちている。恒大集団と同じく破綻危機に瀕している碧桂園(カントリーガーデン)も同じトレンドを描いている。ところが恒大集団は2018年までは業界全体の動きと歩調を合わせていたのに、その後は業界全体のトレンドから外れている(図表1)。
これをどう理解するべきだろうか。「恒大集団だけが個別の経営失敗の結果として落ち込んだ」というのが一つの解釈。そして、もう一つ、「恒大集団が粉飾していたように、中国不動産業界の落ち込みも隠されていたが、それが遅れて露見しつつある」という筋書きも考えられる。
旧市街地改造が生み出した地方不動産バブル
陰謀論のように思われるかもしれないが、何の根拠もない思いつきというわけではない。……
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