
週明け、日本時間の21日未明にアメリカのドナルド・トランプ次期大統領の就任式が行われる。
就任演説でトランプは何を語るのか、世界が注目する中、日本政府も今後の日米関係を見据えて一つの布石を打った。岩屋毅外務大臣を就任式に派遣することを決めたのだ。これまで就任式には駐米大使が出席するのが通例だった。あえて外相を派遣する日本政府=石破茂総理の狙いはどこにあるのだろうか。
「(日米の)首脳会談に向けてしっかりと地ならしをしていきたい」
岩屋は12日のNHKの報道番組に出演した際にこのように語り、2月にも予定される石破訪米の際のトランプ大統領との首脳会談の地ならしに努力する考えを表明した。“友達が少ない”と言われる石破だが、岩屋は先の自民党総裁選挙では石破の選対本部長を買って出た盟友といえる存在だ。その岩屋を敢えて派遣するわけだから、石破の首脳会談にかける意気込みも伝わってくる。
理由は「課題をできるだけ頭に詰め込みたい」から
しかし筆者は石破の外交手法に違和感を抱いている。なぜなら、石破本人がもっと主体的に対トランプの首脳外交を展開する機会はこれまで幾度もあったはずだからだ。
もともと石破は、通常国会が始まる前の今月中旬にアメリカを訪れ、大統領就任直前のトランプと会談する方向で調整を進めていた。しかし、その日程が延期されることになったのが去年の暮れのことだった。当初このニュースが報じられた時、政権基盤の弱い石破の足下を見て「トランプサイドが断って来たのだろうか」と憶測が飛び交ったが、日本側から延期を打診したというのが実態だった。
就任前にいきなり会談してトランプ本人や周辺からどんな要求が上がってくるかわからないという、外務省を中心とした政府内の警戒感があったようだ。ただ、関係者に取材したところ、石破本人もこの時期の会談は乗り気でなかったということだった。
「石破さんには完璧主義的なところがある。だから首脳会談までに日米の課題をできるだけ頭に詰め込みたいという思いがあるようだ」(政界関係者)
また政府としてもトランプシフトが進んでいない実情が窺える。
去年夏ごろ、外務省関係者は、トランプ再選への準備として「周辺を固めていきたい」と語っていた。

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