
極右プロテスタント教会の「弾劾反対」デモには若者の参加が増えたと見られる[サラン第一教会主催の屋外日曜礼拝で、尹大統領(当時)を支持するキリスト教徒たちのためにコーラスをする聖歌隊=2025年1月12日、韓国・ソウル](C)AFP=時事
韓国の憲法裁判所は4月4日、弾劾訴追されていた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の罷免を宣告した。尹氏は直ちに失職し、6月3日に行われる大統領選挙に向けて、与野党の動きが加速している。
この政局の過程では、弾劾に反対する右派が反中意識を利用し、勢力拡大を図ったことが注目される。反中意識に共感する20代や30代、いわゆる「2030世代」と呼ばれる若者の一部が極右集団に加わり、過激な反中言動を繰り返した。いま韓国では、反中意識が既存の極右集団と若者をつなぐ傾向が強まっている。
非常戒厳を正当化した極右プロテスタント教会
「親愛なる国民の皆さん、私は北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守護し、韓国民の自由と幸福を略奪する卑劣な従北・反国家勢力を一挙に撲滅し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣言します」(尹錫悦、2024年12月3日)
尹前大統領が昨年12月3日に非常戒厳を宣言した際、野党による国政の妨害などを理由としたが、その中には「北朝鮮に同調する勢力が政権の弱体化を狙っている」との主張も盛り込まれた。これに即反応したのは、尹氏の熱烈な支持層である極右プロテスタント教会の勢力であった。
全光焄(チョン・グァンフン)牧師が率いる「サラン第一教会」や、孫賢寶(ソン・ヒョンボ)牧師が率いる「釜山世界路教会」などが有名なこの勢力は、多くが60代以上の高齢者で構成され、共産主義者は反キリスト教という認識を持ち、「反共」をスローガンとしている。今回の弾劾政局でもこれらは、非常戒厳を支持、正当化する言説を広めた。
若者世代で風化する「北朝鮮の脅威」
では、若者世代は「北朝鮮共産勢力から国を守る」という主張をどう受け止めたのだろうか。

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