韓国に広がる「核武装論」、その実体――本当に核武装を望んでいるのか

執筆者:朴眞煥 2023年4月25日
タグ: 韓国 尹錫悦
エリア: アジア
アメリカの支援に対する韓国国民の信頼は揺らいでいる[5年ぶりに開催された米韓合同の大規模軍事演習「フリーダム・シールド」=2023年3月13日](C)AFP=時事 / South Korean Defence Ministry
「韓国独自の核武装に賛成が76.6%」という調査結果が呼び水となり、与党有力政治家からも賛成論が相次いでいる。だが、核武装に関する情報を与えた上でのサーベイ実験では賛成が急減するとの結果もある。アメリカの拡大抑止への信頼が揺らいでいるとは言えそうだが、一足飛びに韓国国民が核武装を支持していると考えるのは早計だ。

   北朝鮮の核戦力が向上する中、韓国では独自の核武装論が高まっていると言われる。メディアは「核武装論」を主張する政治家の発言を紹介し、76.6%の人が独自の核武装に賛成すると答えた世論調査結果(韓国ギャラップがシンクタンクChey Institute for Advanced Studiesと今年1月に共同で実施。詳細後述)を取り上げ、韓国社会に「核武装論」が広がっていると報じている。

   今なぜ核武装論が注目されるようになったのか、核武装論を求める世論は本当に高まっているのか、その実態を探る。

「禁忌」ではなくなりつつある核武装論

   昨年11月、韓国の核武装の在り方を模索する民間団体「韓国核自強(独自核)戦略フォーラム」が発足し、注目を集めた。このフォーラムには研究者やメディア関係者など、政治理念を問わず核武装を支持する人々が参加している。韓国の核武装論は以前から存在したものの、特定の政治理念を持つ少数の意見として公の場で議論することが避けられてきたため、「異例の動き」として注目を集めた。

   フォーラムは、公開討論を開くなどして核武装の必要性を積極的に訴えている。趣旨に賛同する政治家も増えており、核武装論は一つの世論として成長しようとしている。フォーラムのある関係者は、今こそ核武装について議論できる社会的環境が整ったと話す。……

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
朴眞煥(ぱくじんふぁん) 報道番組ディレクター、ジャーナリスト。1975年韓国ソウル生まれ。韓国漢陽大学大学院卒業後、作戦将校として空軍に入隊(元空軍大尉)。2005年来日、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程中退、専門は文化人類学。韓国における軍事文化、徴兵拒否運動、反戦平和運動について研究を続け、筑波大学研究員を経て、2016年から現職(主に朝鮮半島情勢、日韓関係を取材しテレビやラジオ番組に出演中)。著作に「韓国の大学における軍事文化と日常-徴兵制をめぐる言説と予備役、現役、女子学生の実践」(『コンタクト・ゾーン』2:89-108.京都大学人文科学研究所)、「韓国社会の徴兵拒否運動からみる平和運動の現状」(所収:田中雅一編『軍隊の文化人類学』風響社)、「異文化で自文化を研究すること、語ること」(所収:神本秀爾・河野世莉奈・宮本聡編『ヒューマン・スタディーズ 世界で語る/世界に語る』集広舎)など。
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