クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

意外に狭い米国・ヤジの許容度

執筆者:徳岡孝夫 2009年11月号
タグ: アメリカ 日本
エリア: 北米

 初めて会った相手と心安く握手する。腰を下ろすと足を組み、十分も話すか話さないうちに互いにファースト・ネームで呼び合う。ざっくばらん。世の中にアメリカ人ほど無作法で無礼な人種はいないと思っていた。 バーネット夫人が書いて若松賎子が訳した『小公子』も、英国貴族ドリンコート侯爵がニューヨークから来た我が孫セドリックの馴れ馴れしい態度に驚き、腹を立てることで始まる。 マナーやディーセンシーという英単語の存在を知らないわけではないが、ついアメリカには礼儀も作法もないのだと思っていた。だからオバマ大統領の議会演説を野次ったジョー・ウィルソン下院議員(サウスカロライナ、共和党)の一言でアメリカが上を下への大騒ぎになるとは――私は昼寝の最中を叩き起されたように感じた。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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