世論迎合なき「改革」を目指せ

執筆者:佐伯啓思 2001年5月号
エリア: アジア

小泉政権発足により、「構造改革」が一層声高に叫ばれているが、重要なのは、ムード的改革ではなく、国益に即した自発的改革だ。 小泉政権が発足して、自民党の党改革とともに、経済の構造改革が政策の柱となっている。思えばこの十年にわたって「改革」をキーワードとした政権が次々とめまぐるしく変わってきた。「政治改革」から始まり、経済構造改革、財政改革、行政改革、教育改革と続き、しかもその中心となる経済改革をとっても、改革の内容は決して常に一貫していたわけではない。規制緩和、価格破壊からはじまり、官僚批判、日本的経済システムの見直し、さらには閉鎖的、集団的な日本人の生活や価値観の見直しにまで至り、この一、二年の「改革」は、金融機関の不良債権処理やIT化の推進を意味しているように見える。

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執筆者プロフィール
佐伯啓思(さえきけいし) 1949(昭和24)年、奈良県生まれ。社会思想家。京都大学名誉教授。京都大学こころの未来研究センター特任教授。東京大学経済学部卒。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。2007年正論大賞。『隠された思考』(サントリー学芸賞)『反・幸福論』『さらば、資本主義』『反・民主主義論』『経済成長主義への訣別』『死と生』『近代の虚妄』『死にかた論』など著作多数。雑誌「ひらく」を監修。
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