中東―危機の震源を読む
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アラブの春から2年──イスラエルが直面する新たな現実
2010年の12月17日、チュニジアの「寒村」と言っていいようなさびれた小都市で1人の青年が焼身自殺を図ってから2年。中東の政治は急激な変化の過程にあるが、その影響を深いところで受けるのがイスラエルである。南で国境を接するエジプトではムバーラク政権が倒れ、ムスリム同胞団主体の政権が誕生して権力基盤を築こうとしている。北の国境を接するシリアではアサド政権が混乱の中に崩壊しつつある。これによりイスラエルの置かれた戦略環境は激変した。11月にガザのハマースとの戦闘を行なったイスラエルだが、国際社会の非難も気にせず、米国の全面的な支持をたのみに、思いのままに掃討作戦を行なって目的を十分達成したうえで引き揚げるという、かつてのような「行動の自由」はもうない。

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