ドーン、ドーン――時計の針が午後六時に差しかかるとき、レストランの前に置かれた太鼓を思いっきり打つ音が、静まり返ったホテルのロビーに鳴り響く。こうした光景は一カ月も続く。ここはインドネシアの首都ジャカルタにあるホテル日航。ここだけでなく、いずれのホテルもレストランの前に太鼓が置いてある。地方都市でも同じだ。太鼓を合図に、レストランを埋め尽くした客たちは、一斉にご馳走が並ぶビュッフェ・カウンターに殺到する。暖かいスープを飲み干し、照焼きチキンや蒸した車えびで山盛りの皿をテーブルに運び、食の祭典が始まる。子供たちは早食い競争。イスラム教徒にとって聖なる断食月、ラマダン風景の一コマだ。

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