老いて気が短くなったせいばかりではないだろう。この国のお節介は我慢の限度を超えている。とくに公共機関のお節介はすごい。 上野の美術館へ行った。大変な込みようで入場までに一時間も待った。展覧会の目玉であるはずの名画の前にたどり着いても、人の頭の間から少し見える程度だ。 美術館のアルバイトなのか、女性スタッフがこちらめがけてにじり寄ってきてこうのたまう。「ガムはおやめください」「えっ」「飲食は禁止されています」「ガムが飲食?」「そうです。美術品を傷めるからです」「えっ」「ガムを吐き捨てたら美術品につくかもしれません」「なるほど」。これはこちらが悪いのだろうが……。
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