チェチェン、拷問、ウクライナ……深まる「ネムツォフ氏暗殺事件」の謎

執筆者:名越健郎 2015年3月13日
エリア: ヨーロッパ

 2月27深夜にクレムリンに近い橋の路上で起きた反体制活動家、ネムツォフ元第1副首相暗殺事件で、ロシア捜査当局はチェチェン共和国内務省部隊に所属したザウル・ダダエフ容疑者ら北カフカス地方出身者5人を逮捕した。黒幕の存在など全容解明にはほど遠いが、「チェチェンの影」は過去の政治的暗殺事件でも浮上している。プーチン体制発足の原動力となった第2次チェチェン戦争以降のチェチェン問題が、政権に付きまとう構図だ。

 

ポリトコフスカヤ事件に酷似

「暗殺事件の捜査は、反体制女性記者アンナ・ポリトコフスカヤ氏の2006年の暗殺事件と同じシナリオをたどっている」(英紙フィナンシャル・タイムズ3月10日)とされるように、アパートのエレベーター内で銃撃されたポリトコフスカヤ氏暗殺事件でも、複数のチェチェン人実行犯がほどなく逮捕された。当時、ドイツ訪問中だったプーチン大統領は会見で、「この記者は政治的役割を果たしておらず、影響はない」とコメントしたが、今回もペスコフ大統領報道官が「政治的に彼は現指導部に脅威ではなかった」と同様の発言をした。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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