バンクーバー五輪の女子フィギュアスケートを現地で取材して、この種目がいまだ政治、そして経済から自由ではないことを痛切に感じてしまった。 フィギュアスケートでは、二〇〇二年のソルトレークシティ五輪の際にフランスとロシアが密室で得点の取引を行ない、それが表沙汰になったことで採点システムが大幅に変更された。 それまでは技術と芸術、二つの要素を六点満点で採点していたが、改正によって一つひとつの技を数値化し、公平性を目指した。実際、この改正はフィギュアスケートの競技性を、より高めることにつながった。 しかし、バンクーバーでは、開催国カナダの選手の得点は“インフレ”気味だったし、メダルを争う選手が集まるフリーの最終組に入ったスケーターの国籍には、地域や国による“議席配分”の匂いがした。

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