東電次期会長の使命は「再建」か「管財人」か

執筆者:安西巧 2012年4月25日
タグ: 原発 日本
エリア: アジア
4月19日、記者団の質問に答える東京電力次期会長の下河辺和彦氏 (C)時事
4月19日、記者団の質問に答える東京電力次期会長の下河辺和彦氏 (C)時事

 4月19日、難航していた東京電力の次期会長人事がようやく決まった。前トヨタ自動車相談役の奥田碩(79)や新日本製鉄名誉会長の今井敬(82)をはじめ元経団連会長クラスの大物財界人の起用を政府は画策したが、福島第一原子力発電所事故で実質的に経営破綻しているうえに、「伏魔殿」ともいわれる複雑な“官僚組織”に牛耳られている同社に切り込む蛮勇を持ち合わせた経営者は皆無だった。  無理もない。そもそも、16万人の福島県民に避難生活を強いている企業のトップを阿吽の呼吸で引き受けてくれるような使命感にあふれた民間人が簡単に見つかるはずがない。「被災者にアタマを下げて最もそれらしく見える人」という、まことしやかな人選基準が霞が関で囁かれていることから、本質を見失った半ば投げやりな政府内の雰囲気も伝わってくる。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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