やっと納税再開「メガバンクの公共性」を問う

執筆者:安西巧 2012年5月30日
タグ: 日本
エリア: アジア

 毎日流れるニュースの中にはメディアの“思考停止”や“作為的な扱い”などによって、何気なく見過ごしたり、聞き逃したりする重要な「事実」がある。最近の例でいえば、メガバンク(大手銀行)の「納税再開」がそれに該当するだろう。5月15日に主要メガバンク3社が2012年3月期決算を発表。その席上、三井住友フィナンシャルグループ(FG)とみずほFGは、傘下の銀行が今年または来年から法人税の支払いを再開する方針を明らかにした。来年から納税を再開する三井住友銀行は15年ぶりといい、昨年法人税の支払いを再開した三菱UFJフィナンシャル・グループは10年ぶりの納税だったらしい(みずほFG【今年からみずほコーポレート銀行が、来年からみずほ銀行がそれぞれ再開予定】は何年ぶりの納税になるか公表していない)。
 多くの人々がこの「事実」に違和感を覚えるはずだ。12年3月期の最終利益は三菱UFJFGの9813億円を筆頭に、三井住友FGが5185億円、みずほFGが4845億円とメガバンク3社合計で1兆9843億円、ざっと2兆円にも達している。08年3月期以降の最近5年間の累計でも三菱UFJFGが2兆3327億円、三井住友FGが1兆3539億円、みずほFGが8595億円の最終利益をそれぞれ計上している。なのに、法人税を10年以上も支払っていなかったのだ(ダンマリを決め込んだみずほFGについては断定できないが……)。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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