谷開来裁判から思い起こす四人組裁判

執筆者:野嶋剛 2012年8月14日
タグ: 毛沢東 中国 台湾

 世界の注目を集めた谷開来裁判だが、罪状認否と証拠の読み上げまでは行ったが、判決は後日に言い渡されるということで、まだ先になりそうな雲行きである。

裁判の模様を台湾のテレビでながめていたのだが、「谷開来が文革のときの江青にだぶって仕方がない」と話していたベテランの台湾人記者の感想を聞き、なるほどと思った。

そういう風に考えると、温家宝が悲憤を込めて「文革のような悲劇をまた繰り返さないとも限らないんだ!」と先の全人代で叫んだ意味の深さがよく分かるような気がした。

薄熙来がいなければ、谷開来がいかに優秀で権力志向の強い女性だったとしても、法廷に引っ立てられる日が来ることはなかっただろうし、毛沢東がいなければ、気が強い女優志望の革命少女だった江青は、ああした結末には遭わなかっただろう。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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