長期にわたる経済の低迷。巨額の政府債務。失業の増加。長期に及ぶ一党支配の終焉後、国民と無縁なところで権力闘争を続ける政治家たち。体制寄りの政治メディア。閉塞感を他者への攻撃で解消する社会の風潮。国民の期待を集める扇動型政治指導者の登場。ナショナリズムの高揚と排外主義の台頭。近隣国との関係悪化......これは西アフリカ・コートジボワール共和国の1990年代の状況である。
今から10年前の2002年9月19日、コートジボワールで内戦が勃発した。かつて「象牙の奇跡」と言われる経済発展を謳歌した同国は南北に分断され、国民生活は崩壊した。内戦の始まりは北部を拠点とする離反兵士750人の武装蜂起であり、同国の内情を知らぬ外国人にとって、それは突然の出来事に見えた。だが、内戦は冒頭に述べたような政治・経済・社会状況の帰結であった。

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