クリミアへの旅(5) 併合を巡る「三つどもえの対立」

執筆者:国末憲人 2014年9月12日
エリア: ヨーロッパ

 クリミア半島の帰属を問うた3月の住民投票で、ロシア併合への賛成が96%を超えたのは、すでにお伝えした通りである。この数値が現実を反映していると思う人はまさかいないだろうが、数字自体は案外、フェイクでも何でもないかもしれない。要するに、併合に反対する人は投票に行かなかったからだ。賛成の人ばかり投票したのだから、このようなパーセンテージになるのも当然だ。

 では、実際にクリミア半島の住人のどれほどがロシア併合に賛成し、どれほどが反対しているのか。これは、難しい問いかけだ。世論調査はないし、したところで市民が本音を言う とは思えない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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