スパイ工作を含めたインテリジェンスの世界では、お互い、相手が何をやっているかだいたい分かっていても、漏れている情報の深刻度などを勘案しながら、あえて手を出さないで泳がせておくことがほとんどである。静かに監視を続けながら、タイミングが来たら一気にそのカードを切る。
中国政府はこのほど、メディアへのリークという形で、台湾に留学する中国人学生に対して台湾の情報機関がさまざまな「工作」を行っていたことを公表した。背後には、今年8月、台湾側の大陸窓口機関「大陸事務委員会」のナンバー2だった張顕耀・前副主任委員が、中台協議に関する台湾側の内部情報を中国側に渡していたとして国家機密法違反の疑いで調査を受けたことに対する報復という理由があったと見られる。張氏の情報提供相手は中国側の高官とされ、摘発という行為自体が中国側に衝撃を与えたことは想像に難くない。

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