猛獣よりも恐いアフリカ「都市犯罪」の病理

執筆者:白戸圭一 2007年10月号
タグ: 日本
エリア: アフリカ

[ヨハネスブルク発]三年後にサッカーのワールドカップが開かれる南アフリカ共和国では、国の玄関に当たるヨハネスブルクの国際空港に到着した旅行者が、宿泊先へ向かう途中や自宅に着いた途端に武装集団に金品を強奪される事件が相次いでいる。七月二十一日に一時帰国した南アのクマロ国連大使が、五日後には著名な聖職者が被害に遭い、一連の事件が注目を浴びることになった。 南アの殺人発生率は日本の約四十倍、米国の約七倍。世界最悪の治安水準だが、入国者の旅程を調べて強盗を企てる手口は、南アが直面する問題が単なる「犯罪の多さ」以上であることを物語る。警察が「入国者の旅程や所持品を知り得る空港内の官憲の関与」を捜査していることからしても、組織犯罪の氷山の一角である疑いが濃厚なのだ。

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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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