テロリストの誕生(7)野に放たれた「クアシ兄弟」

執筆者:国末憲人 2015年5月29日
エリア: ヨーロッパ

 風刺週刊紙『シャルリー・エブド』編集部を襲撃したクアシ兄弟のうちの弟シェリフは、2005年1月に自爆戦闘員としてイラクに赴こうとして、当局に拘束された。拘束直後から2006年10月まで過ごしたパリ南郊フルリ=メロジス刑務所で、フランスのアルカイダ組織の中心人物ジャメル・ベガルと最初に知り合ったと考えられる。

 刑務所内で、多くの受刑者は仲間内だけの名前を持っている。シェリフは「アブ・イッセン」、ベガルは「アブ・ハムザ」という名前で通っていた。

 アブ・イッセンことシェリフ・クアシに対しては、2008年5月に「禁錮3年うち18カ月の執行猶予」の判決が確定した。彼はそれ以前の2006年に出所して、パリ北西部コンフラン=サントノリーヌの大型スーパーの鮮魚部門で働いていた。

カテゴリ: 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授、本誌特別編集委員 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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