新安保法施行と自衛官の悩み

執筆者:林吉永 2016年6月1日
エリア: アジア

 安全保障に関わるシビリアン・コントロールは、集団的自衛権行使を容認、平和安全法制を設定して自衛官の武器使用のケースを増加させた。そのひとつ、『自衛隊法―在外邦人等の保護措置・合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護のための武器の使用―』では、「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」と規定している。しかし、この「合理的」の意味は実に曖昧である。
「時、場所、相手、規模」などの予測が不可能で、しかも、「命懸け」の事態に遭遇してコンマ秒の即応が求められる時、安保関連法を紐解き、道理の適否確認は至難である。曖昧さの解消や逡巡の時間は、リアクションを遅らせ状況を悪化させるだろう。その結果、安全や他国との信頼関係を損ない、集団安全保障の枠内に居る我が国の立場を失いかねない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
林吉永(はやしよしなが) はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
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