サイバーウォー・クレムリン (6)

インターネット「主権」に拘るロシアの「執念」

執筆者:小泉悠 2017年10月5日
エリア: ヨーロッパ
ロシア政府の「情報化社会発展戦略」改定を報じた『ヴェドモスチ』の記事(同紙HPより)

 

 グローバル・インターネットの分断という流れは、それを支える物理インフラの面でも進んで行くかもしれない。そのような未来図を予感させる動きが、昨今、ロシアで見られるようになってきた。

 最初の兆候は、2016年5月に国家プログラム「情報化社会発展戦略」が改定されたことである。

 同プログラムはその名の通り、ロシアにおけるインターネット利用の推進を目的として策定されたものであり、特にロシア政府の「電子政府化」に重点が置かれていた。2010年にはロシア国民の中でオンライン公共サービスを利用できていたのは11%に過ぎなかったが、同プログラムが完了する2020年にはこの割合を85%まで向上させる、などとしている。予算総額は10年間で約1兆2000億ルーブル(約2兆4000億円)となる計画であった。

カテゴリ: 政治 IT・メディア 社会
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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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