
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事
【前回までのあらすじ】
ヘリコプター空母と称される、海上自衛隊最大の護衛艦「かが」。その飛行甲板に、陸自特殊部隊「デルタ」のメンバーが降り立った。「かが」乗組員が「デルタ」の任務をそれとなく察知している様子が、あちこちでうかがえる。だが、感慨にふける暇はなかった。作戦司令部からメールが届いた。〈愛国義勇軍が魚釣島に上陸〉――。
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愛国義勇軍の男たちが「うおつり」に搭載されているゾディアックタイプの高速ボートに乗り移り、魚釣島に向かったことは、階段の上、爆破で出入り口の扉が吹き飛んでしまった甲板の方から、男たちのきびきびとした指示の声が静まり、やがてひとしきり大きくなったボートのエンジン音の唸りがしだいに遠ざかっていったことから、市川も察知した。

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