マネーの魔術史 (29)

「戦争」と「戦費調達」との重要で微妙な関係

執筆者:野口悠紀雄 2017年12月14日
国立銀行が発行した、日本初の紙幣 (C)時事

 

 戦争とおカネは、切っても切れない関係にある。

 おカネがなければ戦争はできない。これは当然のことだが、日露戦争のときはとくにそうだった。

 司馬遼太郎『坂の上の雲』によると、あるとき、仙台の北の気仙沼で含金率が60%という金山が発見されたとのうわさが流れた。埋蔵量は40億円だという。首相の桂太郎は、眉唾だとは思いつつ、「満州の司令部に伝えてやれ」と命じた。

 戦費があると思えば将兵の士気が上がる。戦費は大丈夫と前線に流すことによって、士卒の士気をあおろうとしたのだ。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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