霞む「今日の台湾は、明日の香港」という願い

執筆者:野嶋剛 2017年12月20日
エリア: アジア
台湾の新聞『りんご日報』の紙面で報じられた、呉氏の香港行きが拒まれたニュース

 

 いま台湾と香港を騒がせているのは、香港民主化に対して支援や協力をしてきた台湾の学者や文化人が、香港への入境を相次いで拒否されているという問題である。

文化人や研究者の「入境拒否」

 12月16日、台湾の中央研究院台湾史研究所副研究員の吳叡人氏と、中央研究院社会学研究所副研究員の呉介民氏が、香港中文大学の学生会が主催するシンポジウムのゲストに招かれて、インターネットから香港の入境ビザを申請したところ、発給を認められなかった。また、12月上旬にも台湾の文化団体「中華文化総会」副秘書長の張鐵志氏も入境できなかった。彼らはいずれも香港の民主化運動や「雨傘運動」(2014年に起こった、香港政府に対する民主化要求デモ)の活動家と近い関係にあるか、言論界で香港の運動をサポートする発言を重ねていたことから、「黒名単(ブラックリスト)」に入れられたとみられる。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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