マネーの魔術史 (35)

「手押し車の年」となったドイツ1923年

執筆者:野口悠紀雄 2018年1月25日
エリア: ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 第1次世界大戦終戦から5年後のドイツ。1923年は「手押し車の年」と呼ばれる。パン1斤を買うにも、手押し車に札束を積んで行かなければならなくなったからだ。

 10月には、インフレ率が 2万9500%に達し、物価は 3.7日ごとに倍になった。1カ月で、物価が約 300 倍にもなってしまうのだ。

『ロンドン・デーリー・メール』は、ベルリン特派員のつぎの記事を載せていた。「昨日はハム・サンドイッチが『たった』1万4000マルクだった店で、今日は同じサンドイッチが2万4000マルクになっていた」。「しかし、幸い賃金も上がっており、閣僚の給与は、10日前の2300万マルクから、3200万マルクに引き上げられた」

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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