留学生の世話をする係りの人が「写真の単位も取っておきなさい。論文を書く必要がないし、カメラは日本の得意な分野だから」というので、私は写真の単位も取った。隣に暗室の付いた教室だった。50数年前の昔、日本では1眼レフが出始めた頃の話である。
最初は光やレンズについて講義がある。カメラマンでもない私は初めてhyperfocal distance(過焦点距離)などという英語を習った。対象が一定の距離以上になると焦点が無限大になる。理論から始めて、学期の終わりにはカラーフィルム(アンスコカラー)の現像まで行く予定になっていた。3週間ほど進んだところでテストがあった。その翌週、ドゥマレット先生はクラスを見渡して言った。

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