「君主号」の世界史 (5)

漢王朝の「天下」――皇帝の確立

執筆者:岡本隆司 2018年5月26日
タグ: 中国
エリア: アジア
始皇帝が崩じた後の混乱を制し、「皇帝」に即位した漢の高祖劉邦
 
 

 項羽との苦闘の末、勝利した漢王の劉邦が、紀元前202年、「皇帝」に即位した。そのため劉邦の「皇帝」は、歴史的制度的には、始皇帝よりもむしろ「義帝」の後継と考えたほうがよい。数ある「諸侯王」がすでに存在し、かつその推戴によって即いた位だからである。

劉邦の「皇帝」即位

 劉邦は項羽から覇権を奪った。だからこの時点では、「覇王」の項羽がそうだったように、その覇権と「皇帝」の称号とは、必ずしも一致していない。劉邦も「漢王」のままだったし、本人もどうやらそのつもりだった。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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