
カンヌに勢ぞろいした「万引き家族」の面々。左からリリー・フランキー、佐々木みゆ、安藤サクラ、是枝裕和監督、樹木希林、城桧吏、松岡茉優(C)AFP=時事
『万引き家族』(原案・監督・脚本・編集=是枝裕和)は、本稿(上)で述べた3つの出発点の延長線上にある。
画面を作るテクニックはいよいよ磨きがかかった。例えば、終盤で治と祥太が信代に面会するシーン。信代は祥太を攫った場所を本人に告げるが、この切り返しでカメラは両者の目線をまたぐ。ほかにも鏡や反射の効果、治と祥太が連れてきた少女・じゅりのシーンに登場する球体、オレンジ色の果実の反復使用、電車や船の通過といった動きの設計、衣裳を含めた記号論的配色など、暗示の技術は世界的水準と言える。夏に夕立が降り出すカットの、ふと暗くなる感じなどはスタッフ同士の連携のたまものだろう。フィルム撮影なので火の色はキレイに出た。その一方、夏のシーンで庭に面した網戸を開け放しているなど、おかしなディティールがあるのも相変わらず。

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