岩瀬昇のエネルギー通信 (240)

ロシアの財布「国営石油」保有ベネズエラ資産譲渡はプーチンの「深謀遠慮」

策士の腹を読み解くには広く深い視点が必要(C)AFP=時事
 

 この動きは、どう読めばいいのだろうか?

 ロシアの国営石油「ロスネフチ」が、所有しているベネズエラのすべての資産と事業をロシア政府に売り渡す、というのだ。

 これで、ベネズエラを巡る米国の制裁が「ロスネフチ」本体に及ぶ可能性を払拭できる、ということらしいが、本当にそれだけが狙いなのだろうか?

 本欄『「トランプ外交」矛盾迷走「対ベネズエラ制裁」今度はロシア国営石油』(2020年2月21日)でご紹介したように、米国は今年の2月中旬、「ロスネフチ」の子会社「ロスネフチ・トレーディング」と、同社の最高経営責任者(CEO)ディディエ・カシミロを制裁対象とした。同社が制裁に違反してベネズエラ原油の販売と輸送を手伝っている、との嫌疑からだ。 

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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