【特別コラム】コロナと生きるということ(5)対立する世界のなかで

執筆者:内山節 2021年1月3日
エリア: アジア
 

 

 新型コロナウイルスが発生したことを私たちが知ったのは、「中国、武漢で爆発的な感染」というニュースに接したときだった。当時は、コウモリのもつコロナウイルスが人間に感染したと伝えられた。

 だが、今日では訳がわからなくなっている。中国発のウイルスの可能性が高いと私は思っているが、中国はそれを否定するキャンペーンを繰り広げている。といっても中国の報道を信じる人は中国人しかいないだろう。

 しかし、気づかないうちに最初に発生していた国があったのではないか、という質問を受ければ、私たちは答える術をもたない。たとえば日本で、感染しても誰も気づかないほどに毒性の弱いウイルスが発生し、観光客などをとおしてそれが中国に渡り、武漢で変異して毒性を増したのだという研究結果が、誰かから発表されたとしよう。この場合、その説が正しいかどうかは判断しようがない。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
内山節(うちやまたかし) 哲学者。1950年、東京生まれ。群馬県上野村と東京を往復しながら暮らしている。著書に『「里」という思想』(新潮選書)、『新・幸福論』(新潮選書)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『内山節著作集』(全15巻、農山漁村文化協会)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top