インテリジェンス・ナウ

中国がICBM基地を10倍以上に増強:劇的な核戦略転換の意図を探る

執筆者:春名幹男 2021年8月24日
エリア: アジア 北米
7月26日に公表された、中国・新疆ウイグル自治区に建設中の核ミサイル用地下発射施設[2021 Planet Labs, Inc.](C)AFP=時事
ここにきて、次々に明らかになってきた中国の核戦略増強。これまでの基本戦略「最小限の核抑止力」を180度転換させた、その「本気度」とは。

 これまで「最小限の核抑止力」という控え目な核戦略を掲げてきた中国。過去数十年は、地上の固定基地に実戦配備する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を総数20基程度に抑えてきた。

 その戦略を、中国共産党が創設100周年を迎えた今年になって突然転換し、一挙に10倍以上の推定約250基に劇的に増強させつつあることが明らかになった。

 民間の人工衛星が撮影した中国の3カ所のICBM基地の写真を、2つの米民間研究機関の専門家が分析した結果、判明したのである。米政府情報機関もこのインテリジェンスを得ている。中国側はまだ公式に確認していないが、米国では中国のこうした核戦略転換の意図をめぐって議論が起きている。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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