恒大集団の破綻危機を中国共産党ガバナンスの「大循環」で捉える

執筆者:宮本雄二 2021年11月5日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
90年代からの制度構築と管理強化に取り残されていた不動産産業  ©︎ CFoto/時事通信フォト
巨大な中国で日本式の微調整は通用しない。指導部の意向を汲んで大挙して動く構造により、「最適解」から大きく外れることもある。ゆえに中国のガバナンスは「乱」と「統」とを循環し、政策の重点も「経」と「政」との間を揺れ動くのだ。揣摩憶測入り乱れる不動産業界の混乱もこの文脈の中に位置付けて捉えることが必要だろう。

 最近、米国の中国語紙の論評(10月26日付『多維新聞』「中国共産党の難題:止まないガバナンスの“一刀切”」)に面白い表現があった。それは「緩めれば直ぐに活き(活発になり)、活きれば直ぐに乱れ、乱れれば直ぐに統べ(統制を強化し)、統べれば直ぐに死ぬ」というもので、これに「死なないように緩めれば」という言葉を継ぎ足せば、最初とつながってしまう。終わりは来ないのだ。中国共産党のガバナンスというものの本質をうまく描いていると思う。「一刀切」とは、刀でバッサリ切ることで、複雑さや、ことの軽重と関係なく、一律に処理してしまう中国の官僚機構のやり方をよく表している。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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