「平和構築」最前線を考える (36)

国連「ウクライナ侵略決議」が否定した「弱者の屈従による和平」

執筆者:篠田英朗 2022年3月4日
3月2日の国連緊急特別総会で採択された「侵略非難決議」。決議には拘束力がないと言われるが、その内容はきわめて重い (C)EPA=時事
常任理事国ロシアの「侵略」という事態を前に、機能不全に陥った国連安保理事会。だが3月2日の国連総会決議は、ロシアの行動に対する国際社会の共通理解を確立したものとして画期的だ。

 ウラジーミル・プーチン露大統領のウクライナ侵略(Aggression against Ukraine)は、国際社会に深刻な危機をもたらしている。この危機がどこまで深刻なものになるのか、まだ見通すこともできない。

 すでに明白なことの1つは、国際社会の秩序に深刻な動揺をもたらした大事件である、ということだ。同盟国・米国をはじめとする欧米の友好諸国が団結して実施する経済制裁であっても、これまで日本が同調することは稀であった。しかし今回は、日本ですら、ロシアのSWIFT(国際銀行間通信協会)決済体制からの排除に協力するなどの踏み込んだ姿勢を見せている。それだけウクライナ危機は深刻なのである。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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