ウクライナ侵攻で分断するEU「ふたつのエネルギー自給」

執筆者:市川顕 2022年4月6日
エリア: オセアニア
ポーランド南西部トゥルフの石炭火力発電所(C)AFP=時事
ロシアのウクライナ侵攻はEUのエネルギー安全保障の脆弱性を浮かび上がらせた。再生可能エネルギーのさらなる推進と、東欧加盟国が主張する自国産化石燃料の使用。「ふたつのエネルギー自給」の議論に割れている。

 

遅々として進まないエネルギー制裁の議論

 露のウクライナ侵攻を受け、EUのエネルギー制裁に関する議論が高まりを見せている。

 EUの対露制裁はこれまで大別して4段階にわたって行われたが、エネルギー制裁に関する議論は遅々として進まず、露産エネルギーの禁輸に踏み切った米国ほどの強い対応には至っていない。

 第1弾は露による「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」の独立承認と、これら地域に対する平和維持を目的とした露軍派遣に対して、2月23日に発動したもので、これら地域の独立承認に関わった個人や組織の資産凍結や同地域とEUの貿易制限などが行われた。

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執筆者プロフィール
市川顕(いちかわあきら) 東洋大学国際学部教授、博士(政策・メディア)。専門はEU政治 、グローバル・ガバナンス論、国際関係論。慶應義塾大学総合政策学部卒業。東京工業大学産官学連携研究員、関西学院大学産業研究所准教授などを経て2020年4月より現職。著書に『EUの社会経済と産業 』(2015年/関西学院大学産業研究所)、『ASEAN経済共同体の成立』(中央経済社/2017年)、共著に『EUの規範とパワー 』(中央経済社/2021年)、『世界変動と脱EU/超EU』(日本経済評論社/2022年)などがある。
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