自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争(第4部)――“戦後”の日米同盟と国際社会

執筆者:岩田清文
執筆者:武居智久
執筆者:尾上定正
執筆者:兼原信克
ベルギー・ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部 ©時事
国連安保理の常任理事国が隣国の主権を犯して戦争を始めた。戦後の国際秩序が根底から揺るがされる中、国連を中心とした“国際協調”と日米同盟を両輪としてきた日本外交は、これからどこへ向かうのか――。(こちらの第3部から続きます)

自衛隊の装備をすべてNATO標準に

岩田清文(元陸上幕僚長):最後の第4部では、今後の日米同盟と多国間協力のあり方を検討したいと思います。まず兼原さんから、日米同盟強化の重要性とそこにまつわる課題について、ご意見をお願いします。

兼原信克(元国家安全保障局次長):はい。実はアメリカも冷戦が終わってから、実際に核兵器を含めた大規模な戦争をやるということはあまり考えてきていない。ソ連がいなくなって、中東で対テロ戦争ばかりやってきた。台湾をめぐって中国と本当に戦争するとどうなるかということは、まだ考え抜いていないと思います。特に、強大化する中国の通常兵力を前に、核を使って中国を抑止するなんて全く考えていない。日本はアメリカにとって太平洋で最大の“出城”です。仮に台湾をめぐって米中戦争になるとしたら、初めて日米の同盟調整メカニズムをフルに使う戦争をしなくちゃいけない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
岩田清文(いわたきよふみ) 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)。
執筆者プロフィール
武居智久(たけいともひさ) 1957年生まれ。元海将、海上幕僚長。防衛大学校(電気工学)を卒業後、1979年に海上自衛隊入隊。筑波大学大学院地域研究研究科修了(地域研究学修士)、米国海軍大学指揮課程卒。海上幕僚監部防衛部長、大湊地方総監、海上幕僚副長、横須賀地方総監を経て、2014年に第32代海上幕僚長に就任。2016年に退官。2017年、米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェロー。2022年5月現在、三波工業株式会社特別顧問。
執筆者プロフィール
尾上定正(おうえさだまさ) 1959年生まれ。元空将。防衛大学校(管理学)を卒業後、1982年に航空自衛隊入隊。ハーバード大学ケネディ行政大学院修士。米国国防総合大学・国家戦略修士。統合幕僚監部防衛計画部長、航空自衛隊幹部学校長、北部航空方面隊司令官、航空自衛隊補給本部長などを歴任し、2017年に退官。2022年5月現在、API(アジア・パシフィック・イニシアティブ)シニアフェロー。
執筆者プロフィール
兼原信克(かねはらのぶかつ) 1959年生まれ。同志社大学特別客員教授。東京大学法学部を卒業後、1981年に外務省に入省。フランス国立行政学院(ENA)で研修の後、ブリュッセル、ニューヨーク、ワシントン、ソウルなどで在外勤務。2012年、外務省国際法局長から内閣官房副長官補(外政担当)に転じる。2014年から新設の国家安全保障局次長も兼務。2019年に退官。著書・共著に『歴史の教訓――「失敗の本質」と国家戦略』『日本の対中大戦略』『核兵器について、本音で話そう』などがある。
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