自衛隊最高幹部が語るウクライナ戦争(第3部)――核戦略と台湾有事への影響

執筆者:岩田清文
執筆者:武居智久
執筆者:尾上定正
執筆者:兼原信克
2022年6月10日
カテゴリ: 政治 軍事・防衛
ハルキウ近郊で米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」を構えるウクライナ兵 ©AFP=時事
米国をはじめとする西側諸国は、ウクライナに対して資金と情報の両面で援助を続ける一方、直接介入には踏み込まなかった。この事実は、自前の核抑止力を持たない日本にとって何を意味するのか。また、台湾有事にはどう影響するのだろうか。(こちらの第2部から続きます)

国民の8割が「核について議論すべき」

岩田清文(元陸上幕僚長):ここまでウクライナ戦争の教訓について色々と議論してきましたが、これらの教訓は日本に対して、具体的にどのような影響を及ぼすのでしょうか。最初に、世界的な核戦略にどういう影響があったかということについて、尾上さんからお願いします。

尾上定正(元航空自衛隊補給本部長):はい。今回、核兵器は「使われる可能性のある兵器」だという認識が、国際的に広まってしまいました。冷戦時代はMAD(相互確証破壊)という概念があり、戦略核兵器をお互いに撃ち合ってしまったら生き残る国はないということで、核は使えない兵器だと言われていた。核は持っていることで抑止が効くという前提で、核抑止理論が構築され、核軍縮や核の軍備管理が行われてきたわけです。ところが今回、プーチンのいうエスカレーション抑止(escalate to de-escalate)戦略、つまり「通常戦をエスカレーションさせないために核兵器を使う」という脅しによって、通常戦を支配しようという戦略ですが、これが機能してしまっている。この有効性を知った中国は今後、当然それを使ってくるだろうと考えざるを得ない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
岩田清文 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)。
執筆者プロフィール
武居智久 1957年生まれ。元海将、海上幕僚長。防衛大学校(電気工学)を卒業後、1979年に海上自衛隊入隊。筑波大学大学院地域研究研究科修了(地域研究学修士)、米国海軍大学指揮課程卒。海上幕僚監部防衛部長、大湊地方総監、海上幕僚副長、横須賀地方総監を経て、2014年に第32代海上幕僚長に就任。2016年に退官。2017年、米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェロー。2022年5月現在、三波工業株式会社特別顧問。
執筆者プロフィール
尾上定正 1959年生まれ。元空将。防衛大学校(管理学)を卒業後、1982年に航空自衛隊入隊。ハーバード大学ケネディ行政大学院修士。米国国防総合大学・国家戦略修士。統合幕僚監部防衛計画部長、航空自衛隊幹部学校長、北部航空方面隊司令官、航空自衛隊補給本部長などを歴任し、2017年に退官。2022年5月現在、API(アジア・パシフィック・イニシアティブ)シニアフェロー。
執筆者プロフィール
兼原信克 1959年生まれ。同志社大学特別客員教授。東京大学法学部を卒業後、1981年に外務省に入省。フランス国立行政学院(ENA)で研修の後、ブリュッセル、ニューヨーク、ワシントン、ソウルなどで在外勤務。2012年、外務省国際法局長から内閣官房副長官補(外政担当)に転じる。2014年から新設の国家安全保障局次長も兼務。2019年に退官。著書・共著に『歴史の教訓――「失敗の本質」と国家戦略』『日本の対中大戦略』『核兵器について、本音で話そう』などがある。
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