ロシア・ウクライナ戦争が終わらせた米ロ軍備管理体制:核の恫喝が対中抑止に持つ含意(上)

執筆者:秋山信将 2022年6月13日
核兵器をめぐる国際社会の分断は、今後一層深まっていく(広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花するエマニュエル駐日米大使[左]。右は岸田文雄首相=3月26日)  (C)時事
ロシアが行った核の恫喝は、核を地域レベルの戦闘でも「使える」兵器へと変貌させた。米国は、ロシア、中国と新たな規制構築を行わざるを得ないだろう。ただ、冷戦期からの米ロの軍備管理体制が基盤にしてきた秩序の前提自体が壊れている。(後編はこちらのリンク先からお読みいただけます)

 ロシアによるウクライナ侵略(ロシア・ウクライナ戦争)は、核大国であるロシアが、かつて世界第3位の核兵器配備国(保有国ではない)であったウクライナに対し、核兵器の使用をちらつかせつつ国際法上正当な理由がないまま攻撃を行ったということで、軍事戦略上の核兵器の役割や国際政治における核兵器の意義にも注目が集まることになった。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
秋山信将(あきやまのぶまさ) 1967年生れ。一橋大学大学院法学研究科教授、一橋大学国際・公共政策大学院長。専門は国際政治。特に、安全保障、軍備管理・軍縮、不拡散、エネルギー安全保障。広島市立大学講師、日本国際問題研究所主任研究員、在ウィーン国際機関日本政府代表部公使参事官などを経て現職。著書に『核不拡散をめぐる国際政治 ―規範の遵守、秩序の変容』(有信堂高文社、2012年)、『NPT―核のグローバル・ガバナンス』(岩波書店、2015年、編著)、『日米安保と自衛隊(シリーズ日本の安全保障 2)』(岩波書店、2015年、共著)、『「核の忘却」の終わり―核兵器復権の時代』(勁草書房、2019年、共著)など。博士(法学)。
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