「経済版NATO第5条」で無法者国家を抑止せよ

核開発問題をめぐる経済制裁によりイランの通貨は史上最安値圏まで下落、イラン政府は5月12日に食用油、鶏肉、卵、乳製品などの基本的な食料品を300%値上げした(6月13日、テヘラン) (C)EPA=時事
リズ・トラス英外相はG7各国に向けて「経済版NATO」の必要性を訴えた。ウクライナ侵攻で西側諸国がロシアに対する“武器”とした経済制裁、これを力による現状変更を狙う国家への抑止に使う仕組みが必要だ。目指すべきは、2023年の広島G7までに〈経済版第5条〉のアウトラインについて合意をまとめることだろう。

   日本は長い間、アジア以外での紛争に関与することに慎重だった。しかし今回のウクライナ侵攻を受け日本政府は、国際的に承認されている国境線を力によって変更させてはいけないと、アメリカやヨーロッパ諸国と足並みをそろえ、ロシアに対する経済制裁に踏み切った。

「もし国際社会がロシアによるウクライナ侵攻を何らかの形で容認したり見逃したりすれば、インド太平洋を含む他の地域に対し、このような行動が許容されるという間違ったメッセージを送ってしまうおそれがある」。5月初め、岸信夫防衛大臣はワシントンポストにこのように語った。そして“正しいメッセージ”を伝えるため、岸田文雄総理大臣は、ロシア中央銀行が日銀に持つ数百億ドル(数兆円)の円建て外貨準備の凍結や、ロシアの特定銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すること、政権幹部やオリガルヒ(新興財閥)の資産凍結、さらに軍事転用可能な先端技術の輸出規制や、ロシア産石炭や石油の輸入を段階的に削減することなども掲げている。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
ブルース・ストークス(Bruce Stokes) ジャーマン・マーシャル財団客員シニア・フェロー/英・王立国際問題研究所アソシエイト・フェロー。「ナショナル・ジャーナル」誌特派員、外交問題評議会上級フェローなどを歴任、1997年にはクリントン政権「Commission on United States-Pacific Trade and Investment Policy」のメンバーとして最終報告「Building American Prosperity in the 21st Century」を執筆している。2012年から2019年にかけてはピュー・リサーチ・センターで国際経済世論調査部ディレクターを務め、多岐にわたる項目について日本人の意識調査を実施した。
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