安倍元首相銃撃事件とこれからの保守政治

執筆者:五百旗頭 薫 2022年7月20日
エリア: アジア
保守に固執するようでは継承にならない。そして現実主義の政治家が戦略的に保守層に接近している場合は……[故安倍晋三元首相に弔意を示すため、東京・永田町の自民党本部に献花に訪れた人たち=7月15日午後](C)時事
政治への打撃であり、言論への冒涜であり、民主主義への攻撃である――その通りではあるのだが、与党は同じ批判を繰り返し、野党も思いは同じだと呼応する。事件に非政治的な背景が感じられるにもかかわらず、強引に政治の文脈に回収することで、人々の共感がそがれてはいないか。日本の政治不信は、問題を解決する能力ではなく、そもそも問題を認識する能力への疑いに発している。

 安倍晋三元首相への銃撃は残忍な愚行であり、阻止できなかったことは返す返すも残念である。この事件ですぐに大きく政治が動くような予感を私は持っていない。しかし、それとは別に不吉さと無力感を覚える。その正体を確かめたくて、この文章を書いている。

 なぜ不吉なのか。実力ある保守政治家が暗殺されると政治が漂流するというのが、日本史の経験則かもしれないからだ。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
五百旗頭 薫(いおきべかおる) 東京大学大学院法学政治学研究科教授。1974年生まれ。東京大学法学部卒業。博士(法学)。東京大学法学部助手・講師、東京都立大学助教授(首都大学東京准教授)、東京大学社会科学研究所准教授を経て、2014年4月より現職。主な著書に『大隈重信と政党政治―複数政党制の起源 明治十四年-大正三年』(東京大学出版会)、『条約改正史―法権回復への展望とナショナリズム』(有斐閣)、『〈嘘〉の政治史―生真面目な社会の不真面目な政治』(中公選書)がある。
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