日本が問われる死刑制度の秘密主義

執筆者:佐藤大介 2022年8月16日
タグ: 日本
エリア: アジア
秋葉原無差別殺傷事件の現場となった交差点=26日午前、東京都千代田区(C)時事
秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚の死刑執行は、異例の火曜日に行われた。古川禎久法相は安倍晋三元首相の銃撃事件との関連を否定するが、なぜ今だったのかという疑念は消えない。

 

 7月26日午前、東京拘置所で1人の確定死刑囚に刑が執行された。2008年6月、東京・秋葉原で7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせた無差別殺傷事件の実行犯、加藤智大元死刑囚(39)だ。死刑執行は昨年12月以来で、岸田文雄政権下では2度目となる。

 この日の死刑執行に、意外な印象を抱いた関係者は少なくなかった。

 刑事訴訟法では、法相が死刑執行を命じた場合、5日以内に執行しなければならないと記されている(第476条)。明確な決まりなどはないが、これまでは法相が月曜日に「死刑執行命令書」へサインし、その週の木曜日か金曜日に執行されることが多かった。法務省OBは「木曜日や金曜日にサインをすれば、大臣は『死刑を命じた』という思いを抱えて週末を過ごすことになる。週明けに決済するのは、そうした心理的負担を軽減する意味もある」と明かす。

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カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
佐藤大介(さとうだいすけ) 共同通信社 編集委員兼論説委員。1972年、北海道生まれ。明治学院大学法学部卒業後、毎日新聞社を経て2002年に共同通信社に入社。韓国・延世大学に1年間の社命留学後、09年3月から11年末までソウル特派員。帰国後、特別報道室や経済部(経済産業省担当)などを経て、16年9月から20年5月までニューデリー特派員。21年5月より現職。著書に『ルポ 死刑 法務省がひた隠す極刑のリアル』 (幻冬舎新書)、『ドキュメント 死刑に直面する人たち――肉声から見た実態』(岩波書店)、『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』(角川新書)、『オーディション社会 韓国』(新潮新書)などがある。
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