安保か、経済か――米中間の塀の上を歩く韓国の「足元」(下)

朴振韓国外相(左端)と王毅中国外相(右端)の会談は、夕食を交え5時間に及んだ(韓国外交部HPより)
5時間に及んだ中韓外相会談で中国が突き付けたのは、「独立自主」という名の「米国離れ」だ。「THAAD」と「半導体」で揺さぶられる韓国を、いかに中国サイドに押しやらないかが今後のカギとなる。(こちらの前編から続きます)

 韓国の朴振(パク・チン)外相はカンボジアで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合などに出席するため、8月3日からプノンペンを訪問した。

日中外相会談中止で「日韓」に対応差

 8月4日にはASEANプラス3(日中韓)外相会議が開かれた。中国の王毅国務委員兼外相はナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問について、

「米国は越えてはならない一線を越えた」

 と米国を厳しく非難した。これに対し、林芳正外相は中国軍による台湾周辺での軍事活動に「重大な懸念」を表明し、「台湾海峡の平和と安定」が国際社会の安全と繁栄に「不可欠」と反論。台湾問題が「対話により平和的に解決されることを期待する」とした。王毅外相はさらに発言し、歴史的に「(台湾を植民地化した)日本は台湾問題に言及する資格がない」と日本を批判した。朴振外相はこの時は、台湾問題に言及しなかったという。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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