いまアメリカ当局者が議論しているウクライナ復興支援「水面下の焦点」

戦後復興計画に今すぐ着手する必要がある[キエフを訪れたサマンサ・パワーUSAID長官(中央)=10月6日](C)AFP=時事
100兆円規模ともされる復興支援の枠組作りは、ウクライナのEU加盟や安全保障とも密接に絡むだけに、各国の足並みが揃っているとは言い難い。米国内でも国務省、ホワイトハウス、財務省などの意見に相違がある。だが、当局者たちが水面下で行っている議論の焦点を捉えれば、霧の中の戦後復興の姿がおぼろげながら浮かび上がる。

 このところのウクライナの反転攻勢により、ロシアが侵攻開始した2月24日以来続くこの戦争が予想よりも早く終わるかもしれないという期待が高まっている。ウラジーミル・プーチン露大統領は約30万人の予備役動員に踏み切り、核の脅しも振りかざしているが、彼もまた終盤が近づきつつあると感じていると言えるだろう。

 言い換えれば、ウクライナの戦後復興計画に今すぐ着手する必要がある。10月25日にベルリンで行われる復興会議には、ウクライナの再建プロセスに出資するであろう国々が集まる見通しだ。スイスのルガノで開催された7月の前回会議は、復興計画の作成まで到達できなかった。また筆者がつい先日、米国務省やホワイトハウスの高官とそれぞれ議論したところ、両者の間あるいは財務省との意見の相違があることや、議会の支持が得られるか不透明なことから、ベルリンの会議で提示できるのは「復興のための枠組み」が最大限だろうと考えているようだ。これは、難しい判断の多くが残ることを示唆している。特に難しい決定については、来年5月に広島で開催されるG7(主要7カ国)首脳会議まで先送りされてしまうかもしれない。

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
ブルース・ストークス(Bruce Stokes) ジャーマン・マーシャル財団客員シニア・フェロー/英・王立国際問題研究所アソシエイト・フェロー。「ナショナル・ジャーナル」誌特派員、外交問題評議会上級フェローなどを歴任、1997年にはクリントン政権「Commission on United States-Pacific Trade and Investment Policy」のメンバーとして最終報告「Building American Prosperity in the 21st Century」を執筆している。2012年から2019年にかけてはピュー・リサーチ・センターで国際経済世論調査部ディレクターを務め、多岐にわたる項目について日本人の意識調査を実施した。
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